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メタボリックシンドロームと診断されたら 〜最新治療と気になる費用〜

メタボリックシンドロームと診断されたら

メタボリックシンドローム、通称「メタボ」。単なる肥満と思われがちですが、メタボリックシンドロームと肥満には明確な違いがあることをご存じでしょうか?

健康診断でメタボリックシンドロームと診断された時「そういえば最近体重が増えちゃったしなぁ」と軽視してはいけません。メタボリックシンドロームを放置すると、脳卒中や心臓病などの疾病を引き起こすリスクが高まります。

これらの疾病を防ぐためにも、まずはメタボリックシンドロームの基本的な知識と改善方法を身につけ、実践していきましょう。この記事ではそれらに加え、メタボリックシンドロームの最新治療と費用についても、専門医の知見とともに解説していきます

目次

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームを日本語でいうと内臓脂肪症候群。内臓肥満(腸のまわりに過剰に脂肪がたまること)に加えて、高血圧・高血糖・脂質代謝異常などが合わさった状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。

現在の日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準は以下のとおりです。

(参考文献:メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 メタボリックシンドロームの定義と診断基準 日本内科学会雑誌)

必須項目

腹囲:85cm以上(男性) 90cm以上(女性)

選択項目(以下の3項目のうち2項目以上)

  1. トリグリセライド血症(中性脂肪):150mg/dl以上 かつ(または) HDLコレステロール:40mg/dl未満
  2. 収縮期血圧:130mmHg以上 かつ(または) 拡張期血圧:85mmHg以上
  3. 空腹時血糖:110mg/dl以上

日本における肥満の定義がBMI(体重kg ÷ (身長m)2)25以上であるのに対し、メタボリックシンドロームは腹囲+高血圧・高血糖・脂質代謝異常の状態で診断されるという違いがあります。

成人男性の2人に1人がメタボリックシンドローム!?

厚労省の発表した「令和元年国民健康・栄養調査」によると、全体の約18%がメタボリックシンドロームの疑いありとされています。またメタボリックシンドローム予備軍は全体の約14%を占め、これらをあわせると約3人に1人がメタボリックシンドローム(または予備軍)であることが分かります。

特に男性の割合が高く、メタボリックシンドローム疑いが約28%、メタボリックシンドローム予備軍が約24%、あわせて約52%もの人がメタボリックシンドローム(または予備軍)との結果が出ています。

一方女性は、メタボリックシンドローム疑いが約10%、メタボリックシンドローム予備軍が約7%と、男性に比べると約1/3程度の割合であることが分かります。

メタボリックシンドロームは生活習慣病の前段階

メタボリックシンドロームになるとどのような危険があるのでしょうか。メタボリックシンドロームは内臓脂肪「症候群」という名前の通り、それ自体が病気というわけではありません。しかしあと一歩で生活習慣病に至ってしまう段階であることを理解しておきましょう。

生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」のことです。具体的には、がん・循環器疾患・糖尿病・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの疾患を指します。

(出典:厚生労働省「生活習慣病のイメージ」)

上記の絵でも表現されているように、レベル3(メタボリックシンドローム)とレベル4(生活習慣病)の間には、後戻りできない境界線が存在します。そのためレベル3の段階でどうにか生活習慣病への流れを止め、できるだけレベル2・レベル1の段階へ戻していくことが重要です。

ではどうすればメタボリックシンドロームは改善できるのか、ここからは具体的な対策と治療方法について解説していきます。

自宅でできるメタボリックシンドロームの改善方法

メタボリックシンドロームと診断された方の多くは真っ先に「痩せないと!」と思うかもしれません。しかし無理な食事制限は厳禁です。急激な体重減少は脂肪と共に筋肉量の減少につながります。筋肉量が減少すると消費エネルギー量も減少するため、一時的に体重が落ちても、結果的にリバウンドしやすい体になってしまいます。

内臓脂肪を減少させる基本は摂取カロリーが消費カロリーを上回らないこと
理想は一日三食バランスのとれた食事を心がけ、腹八分目におさえることです。ただし現実は「分かってはいるけど食べ過ぎちゃう」「忙しくてつい外食やコンビニ食ばかりになってしまう」という方が多いのではないでしょうか。

メタボリックシンドロームの治療と費用

自力での食生活の改善や運動がどうしても長続きしない、なかなか結果がでないという方は、医療機関の受診をおすすめします。医療機関でも基本的には自力で行うのと同じく「食事療法」と「運動療法」が中心となります。

BMI35以上の方や、食事や運動療法にて結果がみられない方には薬物療法が行われることもあります。

BMI35の目安

  • 身長160cm 体重90kg
  • 身長170cm 体重101kg

薬物療法では、症状に応じて抗肥満薬「サノレックス」や漢方「防風通聖散」が使われます。どちらもBMI35以上の方や他の疾患(高血圧・高血糖・脂質異常症など)がある場合には保険適用となりますので、医師へご相談ください。

メタボリックシンドロームで外来を受診した場合の目安は以下の通りです。

メタボリックシンドロームの治療費(3割負担の場合)

  • 初診(検査料込):約5,000~10,000円
  • 再診:約3,000~5,000円
  • 薬物療法(保険適用):約1,000~3,000円
  • 薬物療法(保険適用外):約5,000~10,000円

いずれも保険が適用になるかどうかは医療機関やメタボリックシンドロームの状態によっても変わってきますので、不安な方は受診前に医療機関に問い合わせすることをおすすめします。

まとめ

メタボリックシンドロームとは単なる肥満ではなく、内臓肥満に加えて高血圧・高血糖・脂質代謝異常が合わさった状態を指します。放置すると生活習慣病につながるリスクが高まるため、1日でも早く生活習慣を改善しメタボリックシンドロームからの脱却を目指しましょう。

またメタボリックシンドロームは医療機関でも治療ができます。かかりつけ医、またはお近くの専門医に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。

医師のコメント郷 正憲 徳島赤十字病院)

「痩せるための食事というと、何かの成分を取らない(例えば糖質制限ダイエットなど)方法を思い浮かべる方も多いと思いますが、この場合、栄養バランスが偏ってしまい体調不良を起こしてしまう他、ダイエットをやめて再度その成分を摂取するようになった時に体がため込もうとしてかえって肥満がひどくなってしまうリバウンドを起こしやすくなります。そのため、食事を減らすためには、食事全体の量をバランス良く減らす事を心がけるようにしましょう。そんな中でお勧めなのは、置き換え法です。最近発売されることが多くなりましたが、ご飯の代わりに使用するブロッコリーを細切れにした商品や、炭水化物の麺の代わりに使用するこんにゃくによる麺等を利用して、見た目の量は変わず食べた感覚もしっかりしているのにカロリーは減らせているという方法が、持続可能でお勧めです。他には毎日同じ時間に体重を記録して経過を把握すること、野菜を中心にまず摂取すること等を心がけ、1ヶ月に5%ずつの減量を目標に頑張っていきましょう。」

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この記事を書いた人

監修医師:郷 正憲 (徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT
主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』

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